恐竜の全盛期たる白亜紀。
トリケラトプスやティラノサウルス、アンキロサウルスが生きたのもこの時代。
でも実際、どんな恐竜がどこで発掘されているか、ご存じですか?
今回は2024年の辰年に因み、白亜紀の恐竜化石の発掘地を、どんな恐竜が見つかったかと共に見ていきます。
最後には近くの世界遺産も紹介しますよ!
そもそも白亜紀とは
白亜紀は簡単に言うと、めちゃくちゃ長くて暖かかった時代です。
約1億4500万年前から、約6600万年前の7900万年間。
中生代の最後を飾る、恐竜が生きた古の時代です。
……7900万年間ですよ、これは地質年代区分のスケールで見ても、圧倒的に長いです。
大体1億年前を境に、前期と後期に分けて見ます。
単純に長かったので、大陸もたくさん移動しました。
南米とアフリカが分かれたのもこの時代ですし、一度分かれていた南米と南極が再びくっつきました。
インドも分かれて移動しました。
ただし、ユーラシア大陸の一部になったのは、新生代の古第三紀に入ってからのようです。
海水準も大きく上昇しました。
温暖化に加え、大西洋の海底が高くなったので、その分水が陸に押し上げられたんですね。
生き物で言うと、海中ではアンモナイトやモササウルスが有名です。
植物では、後期白亜紀に被子植物が爆発的に増え、現在の植生に近づいたと言われます。
そして6600万年前、運命的な数々の不運に見舞われてしまい、ディストピアが発生しました。
大量絶滅が起こり、恐竜類は鳥類を除き絶滅してしまったのです。
白亜紀はその日まで……恐竜の最も繁栄した時代です。
白亜紀の恐竜類たち
恐竜類の誕生は、中生代最初の三畳紀に遡ります。
劇的に世を席巻したのは後期ジュラ紀でした。
しかし、1億4500万年前――白亜紀の始まり。
見舞われた大規模な環境変化で、ジュラ紀に栄えた竜脚類(りゅうきゃくるい)――いわゆる首長竜たちは、少数派になっていくのです。
代わりに広く台頭したのは、植物食恐竜では鳥脚類(ちょうきゃくるい)と言われる恐竜たち。
イグアノドンやパラサウロロフスなどでした。
イグアノドンは、イギリス南部からベルギーにかけてのウィールド層群で見つかっています。
たくさん研究がされている前期白亜紀の恐竜です。
痛そうな親指で敵を攻撃して身を守ったと言われるほか、知られている恐竜類で初めて〝咀嚼ができた〟こともポイントですね。
後期のパラサウロロフスも、わかりやすい特徴がありますよ。
後頭部に長い突起がありますね、これは空洞の骨で出来ていたのです。
オーボエのような音を響かせて、仲間同士で信号を送り合っていたのでは、という説もあります。
こちらは北アメリカの恐竜です。
……そうなのです。
圧倒的に繁栄はした鳥脚類ですが、微妙に馴染みが薄いというか……一般的に見て、主力級の有名恐竜ではない、ですよね。
では、有名な恐竜たちと言えばどうでしょうか。
肉食恐竜の獣脚類(じゅうきゃくるい)は、やはり圧倒的に人気ですね。
ティラノサウルスとか。
……獣脚類は、鳥類の祖先です。
巨大化して腕が短くなった系と、すばしっこく飛んだ羽毛系に、系譜が分かれているのです。
前者は絶滅しましたが、後者は生き残りました。
白亜紀の時点で、既にたくさんの鳥類がいたようですよ。
もちろん他にも、色んな恐竜がいました。
具体的には下の方で見ていきましょう。
サハラ砂漠周辺のアイドル! 実は水生だったスピノサウルス
背中に背負う扇型の突起で有名なのが、前期白亜紀の獣脚類、スピノサウルスです。
スピノサウルスの化石は、エジプトで初めて発見されました。
しかし、スピノサウルスの研究は少々曰くアリ。
というのも、第二次世界大戦の空襲で、エジプトの化石は失われてしまったのです。
とはいえその後、サハラ砂漠の色んな場所で、新たな化石が続々と見つかっています。
例えば西部のモロッコなんて、ケムケム層――またはテガナ累層と呼ばれる場所は、化石発掘者たちの垂涎の地。
たくさんの白亜紀の化石が見つかっていますね。
また、モロッコほどに便は良くないかもしれませんが、ニジェールの砂漠も有力です。
歩けば恐竜化石に当たると言っても過言ではない。
前期白亜紀に残っていた竜脚類からは、こんな恐竜も出ています。
ニジェールサウルスは、ほとんどの歯が前歯でした。
似たような恐竜がいないので、頭骨を見つければすぐ同定できます。
サハラ砂漠は凄いのです。
以下の画像は、スピノサウルスも見つかるケムケム層に関する論文からの引用。
Bの画像は1がケムケム層、他の数字が同時代の別の化石産地です。
これぞサハラ砂漠のポテンシャル。
情勢的に発掘が難しい地域などもありながら、それでもこれだけ貴重な化石産地があるのです。
そんなわけで、スピノサウルスについても、多くのことがわかっていきました。
陸生と言われていましたが、みるみる説が覆っていくのです。
まず、半水生で浅瀬に生きていたと言われ始めました。
円錐形の歯がワニなどの魚を捕る生き物と同じそうです。
更に、現在では浅瀬どころではない!
多くの時間を水中で過ごしたとまで言われるようになったのです。
というのも、尻尾の形状は長く平たく、スピーディーな泳力を持っていたことがわかってきました。
この辺は、ロボットで尾を再現して動きを実験するという手法もあるようです。
水の中で生きた恐竜がいたのです。
ちなみに、ティラノサウルスとは確実に戦っていません。
……どうやら『ジュラシック・パーク』シリーズでは、映画でそんなシーンがあるそうですね。
スピノサウルスは、白亜紀の前期から中期のアフリカ。
しかしティラノサウルスは、後期の北米です。
つまり、全然違います!
白亜紀って、長いんですよ!!
では次は、後期白亜紀に時間を進めて見てみます。
モンゴルの砂漠で生き埋めに! 8000万年も戦闘中のヴェロキラプトルとプロトケラトプス
白亜紀の後期こそ、恐竜時代の最盛期です。
次はアジアに目を向けてみましょう。
モンゴルのヒーローと言えば、ヴェロキラプトル。
よく知られる『ジュラシック・パーク』では、群れで狩りをする攻撃的な肉食恐竜として描かれます。
ラプトルの愛称で恐怖の対象とされていますね。
今更ですが、いくちゃんは映画も小説も嗜んでいます。
何なら、原作者マイクル・クライトン氏のにわかファンです。
が、知らない方も安心してください。
作品内で描かれたこの通称ラプトル、実はヴェロキラプトルよりもデイノニクスに近いなんて言いますからね!
知ったか映画ファンの皆さまに対して、映画を見ていない読者様でも、どやぁすることができるのですよ!((
本物のヴェロキラプトルを紐解くと、まずその大きさはオオカミサイズ。
体重は45キロだそうです。
結構小さいですね。
読者様方はぜひ、パソコンやスマホの画面から一度目を上げて、目の前でオオカミサイズのヴェロキラプトルがちょこまかしているのを想像してみてください。
うん、怖い。
そして、腕には羽根。
走る際にバランスを取っていた説や、同種間でのディスプレイのため説などがあります。
眼窩は大きく、恐らく夜行性。
多くの光が取り入れられますからね。
また、群れではなく個別で狩りをしていた可能性が高いそう。
何故なら、年齢によって食生活が違うのです。
ヴェロキラプトルも、スピノサウルスやティラノサウルスと同じ獣脚類です。
だから羽毛が生えているんですね、羽毛系獣脚類好き!
そして、このヴェロキラプトルがプロトケラトプスと戦っている状態で、生き埋めになったことがありました。
プロトケラトプスとは、トリケラトプスで有名な角竜類(つのりゅうるい)の代表種の一つ。
頭の上に盾を載せていて、見た目にも植物食恐竜っぽいですね。
同じくモンゴルに棲息していました。
8000万年前のとある日、とあるプロトケラトプスは、捕食者であるヴェロキラプトルに狙われます。
そしてとうとう逃げるに及ばず、鋭いかぎづめで捕えられてしまいました!
負けるものかと、或いはこんにゃろ離せと右足にかぶりつき、お互いに揉み合っていたことでしょう。
そして、突然何らかの原因で生き埋めになりました。
砂丘が崩れたのかもしれません。
この二匹は、生々しい格闘シーンを地中で保持したまま、現代に化石として掘り起こされたのです。
俗に〝ファイティング恐竜〟、または〝格闘恐竜〟などと呼ばれます。
戦ったまま化石となり、そして今も戦い続けています。
永久に戦う世界一のプロ格闘家……そこはかとなく、切なさが漂って見えます。
だって、どっちも望んだわけじゃないし。
モンゴルには乾いたゴビ砂漠があります。
そして、この揉み合った二頭の恐竜たちは、砂漠の南部で埋まっていました。
ゴビ砂漠南部のツグリキンシレという産地、ジャドフタ層から見つかったそうです。
以下は2010年の論文から、モンゴルの恐竜化石産地の地図。
中央部やや西よりの密集地帯の中に、「Tugrikin Shire(ツグリキンシレ)」が見つけられるでしょうか?
ちなみにこの地図は、ジュラ紀の化石産地も含んでいます。
全てが白亜紀ではないのであしからず。
ジャドフタ層では他にも、〝卵泥棒〟の学名で有名なオヴィラプトルなどが見つかっています。
ちなみに、オヴィラプトルは本当は卵泥棒ではありません。名前だけです。
砂漠が化石の産地になるのは、スピノサウルスのサハラ砂漠と同じですね。
しかし、化石のメッカなのは、いかにもな砂漠だけではありません。
岩石地帯も良いんですよ。
恐竜の楽園ララミディア生まれ! 二大恐竜のティラノサウルスとトリケラトプス
お待ちかねのツートップ!
ティラノサウルスとトリケラトプスです。
場所は北米、カナダやアメリカのたくさんの場所、特にロッキー山脈地帯です。
実は恐竜研究において、圧倒的最先端が北米なのです。
だからこそ、有名恐竜の多くも北米出身で知られています。
尻尾の先に鉄球もどきを付けたアンキロサウルスに、頭突き図で知られるパキケファロサウルス。
そして、前項でしれっと触れた〝ラプトル〟もどきのデイノニクスもそう。
オーボエ系音楽家(?)の鳥脚類、パラサウロロフスもそうでしたね。
そして何より〝Tレックス〟の愛称で知られ、大人気のティラノサウルスに、装飾的な襟状フリルを掲げたトリケラトプス!
ちなみに、二列に背負う三角の板で有名なステゴサウルスも、場所は北米でした。
ただし、ジュラ紀の恐竜です、時代が違います。
北米大陸中央から西にかけての荒れ地は、絶好の化石発掘ポイントです!
アメリカのユタ州などは露出した岩石が多く、そこには化石も含まれています。
多くの恐竜たちのほか、海中に没していた地域では海の生き物も。
最初にも述べた通り、白亜紀は圧倒的に海水準が高い時代でした。
中期なんて特に著しく、アメリカ大陸は縦に分断されていたのです。
北極海からカリブ海まで、〝西部内陸海道〟が貫いていました。
その西部を、ララミディア大陸と言います。
現在のロッキー山脈が伸びる縦長の地域が、まさにララミディアの地域です。
ちなみに、東側はアパラチア大陸ですが、先ほど上述した恐竜は全てララミディアの恐竜です。
というか、アパラチア大陸ではあまり恐竜は見つかっていません。
見つけやすい荒れ地は西側に多いという事情もありそう。
有名恐竜たち、凄い密度ですよね。
アメリカが頑張ったこともあって、恐竜研究はここ、ララミディアが牽引してきたと言っても過言ではありません。
みんなが良く知る恐竜の大半は、このララミディアで発掘されています。
ララミディアの恐竜は良く知られているのです。
恐竜は色んな地域にいた! しかし、研究対象に偏りはある
そう、化石の発掘地は偏っているのです。
サハラ砂漠は良好な発掘地だと言っても、実際に良く知られる恐竜はスピノサウルスくらいです。
ゴビ砂漠の恐竜もいくつか知られてはいますが、メジャーな種は多くないですね。
そして、先進地域の北アメリカですら、アパラチア大陸とララミディア大陸では別世界。
化石が見つかっている地域はもちろん他にもありますが、偏りがあるには変わりありません。
様々な背景がありそうです。
発掘しても保存できる施設がなく、最新の研究設備も導入できないとしたら……難しいですね。
治安やアクセスに問題があれば、研究者を呼ぶのも一苦労です。
更に言えるのは、現地の教育状況の違いもあるでしょう。
幼い頃から恐竜の映画を見て、フィギュアで遊んでいるアメリカの人たちであれば、研究したいと思う人も生まれます。
一方で、化石が豊富な地域であっても、その辺に良く落ちていて売れるものだという程度の認識でいたら、化石はただ横流しされていくだけです。
少し地域が離れてしまえば、自国で化石が見つかっているのすら知らず、自国産の化石をアメリカ産だと思い込んでいる層まで出てくるのです。
もちろん、単に地形や植生の差もあります。
湿地で化石が残ることは稀でしょう。
こうして見ると、厳しい格差があるんですね……。
今後、もっと多様な地域で恐竜研究が進み、地域性もわかっていくと面白いですね。
さて最後に、今回取り上げた地域の世界遺産を見ていきます。
何と言っても、発掘場所は現代の一地域であり、調査しているのは現代人なのです。
ニジェールの『アイールとテネレの自然保護区群』
アイールは〝アイール山地〟を、テネレは〝テネレ砂漠〟を指す地域名です。
サハラ砂漠の南西部の広範囲が、テネレ砂漠。
その南にそびえるのが、アイール山地。
この立地とプロフィール、いかにも化石がありそうですね!
実はこの地域、荒涼とした砂漠にも関わらず、一帯で確認される植物類は350種類以上。
豊かな自然遺産として、『アイールとテネレの自然保護区群』は、1991年に世界遺産登録されました――が。
その過程で保護区が整備された結果、現地の方々の生活手段が奪われました。
狩猟や採取で生計を立てていたトゥアレグ族は、狩猟も採取も禁止されたら生きられないのです。
この問題は、内戦にまで発展。
人類の宝である世界遺産が、争いの契機になってしまったのです。
登録の翌年には、『アイールとテネレの自然保護区群』は危機遺産リストに……。
ニジェールは最も貧乏な国と言われる地域の一つ。
理由は色々だとしても、シンプルに考えて、内戦をしていて裕福になれるものではありません。
テネレ砂漠は、白亜紀地層の〝テナレ層〟の名前にもなっています。
ニジェールサウルスのような、不思議な恐竜も国内で見つかっています。
しかし、恐竜化石を発掘するだけの余裕は、色んな意味で中々生み出せないのです。
頑張ろうと思った矢先、コロナ禍に見舞われたなんて話もあります。
そんな事情で、世界遺産の範囲で化石が発掘されているかまでは、いくちゃんにはちょっとわかりません。
とはいえ、世界遺産『アイールとテネレの自然保護区群』自体は、本来は魅力的な人類共通の宝なのです。
モンゴルの『オルホン渓谷の文化的景観』
モンゴルで化石がたくさん見つかるのは、東西や南のゴビ砂漠地域でした。
北部は少々向かないようです……が、どうせならモンゴル北部にも目を向けてみましょう。
(え、ゴビ砂漠に世界遺産はないのかって? うん、まあ、多分……なさそうですね……)
かつてのモンゴル帝国の首都、カラコルムはモンゴルの北部に位置します。
これを含むのが、世界遺産『オルホン渓谷の文化的景観』です。
この遺産の魅力は何と言っても、〝遊牧民族の文化〟ですね!
モンゴル帝国に限らず、突厥やウイグル王国の遺跡もあります。
砂漠の隣の草原地帯です。
オルホン川という水源の側で、この渓谷では長い歴史が営まれたのです。
遊牧民族の歴史は文章に残りにくく、しばしば周囲の大国の歴史書が主な手掛かりになりがち。
必然的に、中国史の脇役のように描かれることも多くなります。
しかし、遠く山々を見晴るかす雄大な草原の前に立ち、乾いた風を感じてみるとどうでしょう。
数々の遺跡を渡り歩くにつれ、その歴史の厚みの一端に触れることもできます。
今を生きるヤギやウマと触れ合う中で、何百年、何千年と受け継がれた歴史に感覚で出会えれば、視界も拓けるかもしれません。
――でも、文字がないわけじゃないんですよ。
何と言っても有名なのが「オルホン碑文」。
8世紀の突厥時代に築かれて、今に至るまで草原の歴史を見届けてきたそうです。
そのあたり、文字資料なんて影も形も存在しない恐竜時代よりは、研究対象として恵まれていますよね。
カナダの『ダイナソール州立公園』
ついに来た真打ち!
これぞララミディア!
『ダイナソール州立公園』の名の通り、まさに恐竜がメインの自然遺産ですね。
ララミディアの記録がぎゅっと詰まった公園です!
州立公園内にあるダイナソーパーク層では、オーボエ系音楽家(?)のパラサウロロフスも見つかっています。
それどころか、ティラノサウルスやトリケラトプスもこの公園で発掘されているのです!
その数なんと、50種以上、完全骨格すらも150体!
数を言われてもピンとこないかもしれません。
50なんて、現生生物の種類数を思えば大したことはないですよね。
でもこれ、世界で知られている恐竜の5%に当たります。
サハラ砂漠もゴビ砂漠も、ヨーロッパもアジアもアフリカも南米もオセアニアも、全部合わせてかき集めても!
悲しいことに、たった78k㎡の『ダイナソール州立公園』で発掘された恐竜の、やっと19倍……。
考えてもみてください。
普通、面積が広い方が、色んな種類が見つかると思いません?
それが、これですよ。
カナディアン・ロッキーの南東地域だけで20分の1ですよ。
そりゃあ認識も偏るわけですよ!
あの恐竜もこの恐竜も、みーんなララミディア生まれで当然です、だって『ダイナソール州立公園』強いんだもん!
それでも世界遺産『ダイナソール州立公園』としては、化石の収集は厳しく規制されています。
その辺はやっぱり、化石発掘先進地域、って感じですね。
ゴビ砂漠とか中国あたりだと、むしろ民間人が研究者より掘っているって言うし。
主な参考文献等
さて、今回は多くの書籍をしっかり参照しました。
……時間と体力の限界に負けてしまい、1冊目はまだ読了できていないんですが、最後まで読みますよ!
だってめっちゃ面白いんですよ!
初心者の方は、濃密で大変かもしれません。
……が、文章自体は非常に明快で読みやすく、一般読者でも読めば楽しめます!
ボリューミーで一気読みには向かないだけで、その分多角的で深い理解へといざなってくれるのです。
詳しくない方でもわかるように――その研究が何をもたらすのか、何故重要なのかといった根本からわかるように、という工夫があり、そこからわかるからこそ、一層楽しませてくれるのです。
恐竜研究の歴史を変えた方が書いている本だと感じます。
もちろん本職の研究者ですが、類稀なるマニアの情熱をひしひしと感じる……。
また、さすがにそんなボリューミーな本をいきなりは……という方は、生物ミステリーPROシリーズも面白いです!
恐竜だけではない本ですが、だからこそ、白亜紀の環境全体への理解が深まります。
もちろん、恐竜の話もたくさんありますよ!
化石の写真が豊富に載っていて、語り口も軽快で日本人著なのも嬉しい。
アメリカ人やイギリス人が書いていると、地名や宗教で常識の壁に当たることも、意外と多いですからね。
これはむしろ、日本人が書く日本人向けの書籍だからこその利点も、ふんだんに散りばめられていると感じます。
初心者でも楽しく読めます!
恐竜化石のレプリカを作る職人さんや、考古学でも大活躍するフランスのドーナツ型巨大施設の話。
もちろん、鳥類への進化や大量絶滅の解説も!
安定の情報源ですね。
こちらはワシントンポストの記事を翻訳したもののようですが、本家ワシントンポストで探しても見つけられず……。
少なくとも日本語版は面白いですが、基本有料記事なので、無料会員登録したら月に1本限定の有料枠で読めます。
中々良かったです。
- マイケル・J・ベントン『恐竜研究の最前線 謎はいかにして解き明かされたのか』2021年
- 土屋健『生物ミステリーPRO 白亜紀の生物 上巻』2015年
- 土屋健『生物ミステリーPRO 白亜紀の生物 下巻』2015年
- 『ナショナルジオグラフィック別冊 新説・恐竜 塗り替えられたその姿と生態』2023年
- NPO法人世界遺産アカデミー『世界遺産大事典〈上〉』2020年
- NPO法人世界遺産アカデミー『世界遺産大事典〈下〉』2020年
- クーリエ・ジャポン『「恐竜の宝庫」ニジェール 2億年前の化石に宿るロマンと闇 | サハラ砂漠に眠る骨にかける夢 | クーリエ・ジャポン (courrier.jp)』2021年
その他、画像引用元は本文中のキャプションを参照
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